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2008年9月24日 (水)

CSRとメンタルヘルス

 講演補足資料集です。

「ガバナンスとCSRは自動車の両輪」,帝人の片山副社長が自社の取り組みを講演
日経ソリューションビジネス) [2008/08/21] より

 東京ビッグサイトで開催中の展示会「エンタープライズ・リスク・マネジメント2008」で,帝人の片山隆之代表取締役副社長 CSRO(写真)が「帝人グループにおけるコンプライアンスとリスクマネジメントの取り組み」について講演した。帝人は1999年に取り組んだ経営改革を手始めに,現在までに何度かの経営改革を経て,社内のリスク管理体制を整えてきた。片山副社長は講演の冒頭で「10年の実績を持っているが,まだまだ発展途上だ」と述べ,自社での取り組み状況を話し始めた。
 帝人では,1999年,2003年,2004~2006年に経営改革を実施している。1999年の経営改革では取締役会の改革が中心で,当時24人だった役員数を9人に一気に減らした。一方で執行役員制度を導入し,社内外の人材が経営に助言するアドバイザリーボードを創設している。リスク管理の取り組みを強化したのは2003年の経営改革だった。独立社外取締役と監査役を設置し,事業リスクを検討・対処する委員会「TRM(トータル・リスク・マネジメント)コミティー」を創設した。2004~2006年の経営改革ではCSR,内部統制プロセスなどの体制を整え,「総合的なリスク管理の取り組みへと発展させた」(片山副社長)。
 片山副社長は,経営システムの3要素として「事業戦略」「ガバナンス」「CSR(企業の社会的責任)」の三つを挙げる。同氏は3要素の関係について,「事業戦略は自動車のエンジンで,ガバナンスとCSRは自動車の両輪に相当する。策定した事業戦略が道を外れないように前に進める役割を持っている」と述べた。ガバナンスとCSRの違いについては,「ガバナンスは株主に向けた経営活動で,CSRは社員や取引先,地域社会に向けた経営活動だ」と説明した。この3要素を具体化する活動内容は,内部統制,コンプライアンス,リスクマネジメントを策定,実行することである。帝人では,片山副社長がリーダーを務める「グループCSR委員会」を設置し,帝人グループ全体のリスク管理を実行している。グループCSR委員会は,管理対象ごとに「グループコンプライアンスリスクマネジメント部会」「グループPL・品質保証部会」など五つの部会で組織化している。
 企業倫理やコンプライアンスを推進する方法として,片山副社長は「ルールを具体的に明示し,それを反復学習させて徹底することだ」と話す。帝人は「Quality of Life」の企業理念を掲げている。この企業理念に基づいた10項目で構成する「企業行動規範」を策定している。さらに,企業行動規範を実際の行動に落とし込んだのが「企業行動基準」で,16項目で構成している。企業行動基準については,各国の法制度に対応したアクションを記述する必要がある。このため,日本版,米国版,EU版,中国版,タイ版,インドネシア版がまとめられている。また,16項目の行動基準をより詳細に記述したガイドラインも,別途作成している。この企業行動基準が,片山副社長が指摘する「ルール」である。
 次は,反復学習だ。企業倫理やコンプライアンスの意識を高めるために,帝人では毎年10月の1カ月間を「企業倫理月間」と定め,研修プログラムを実施したり,直近に発生した企業倫理やコンプライアンス絡みの事件/事故などを小冊子にまとめて配布したりしている。帝人の社員数は全世界で1万9000人おり,そのうち8割の社員が研修プログラムに参加しているという。また,社員の意識が高まっているかどうかを確認するため,年1回,アンケート調査を実施している。
 こうした教育だけではなく,問題を早く見つけ出して厳しく対処できる体制作りも欠かせない。帝人では,「企業倫理意見箱」「コンプライアンスホットライン」「セクハラホットライン」「社外通報受付」と四つの通報制度を設けている。企業倫理意見箱は社内のイントラネットや電子メールで受け付ける。「受け付けた通報を開封できるのは,私とCSR室長の二人だけだ」(片山副社長)という。通報制度で受けた内容については,緊急を要するものや社外への公開が必要なものを除いて,半年に1回の頻度で社員に公開している。2007年度に最も多かった通報内容は人事に関連したことだという。
 通報を受けたら通報者を匿名にして実態を調査する。問題があれば減給や人事など必要な処置を実施し,再発防止に努めなければならない。片山副社長は「処置は厳しく対処しなければならないが,罪を憎んで人を憎まずの心で対応している」と話す。具体的な対処事例として,片山副社長は2004年3月に帝人ファイバーの事業所で発生した高圧ガス保安法違反を挙げた。子会社で発生した法令違反だが,親会社である帝人の社長が10%の減給処分を受けた。
 帝人ではTRMコミティーを設置して,組織的にリスクマネジメントに取り組んでいる。TRMコミティーは取締役会の付属機関という位置づけで,帝人のCEOが委員長を務めている。TRMコミティーは,さらにリスク対象に応じて「ORM」(業務運営リスクマネジメント)と「SRM」(経営戦略リスクマネジメント)の二つに分かれている。TRMコミティーは自然災害,製造物責任・クレーム,メンタルヘルスなどの想定されるリスクを洗い出し,評価する。評価には独自の手法を採用している。まず「事業に対する影響度」と「発生の可能性」を独自に算定する。次に,二つの数値を掛け算して3段階のリスク度を求めている。
 予防的なアクションを実施することも,TRMコミティーの重要な役割だ。営業担当者が社用車を運転中に交通事故を起こした場合,首都圏で大地震が発生した場合,鳥インフルエンザが人に感染した場合などの対処方法をマニュアルにまとめ,社内で配布する。大規模震災への対応策として,今年からBCP(事業継続計画)の取り組みに着手した。震度6以上の大震災が発生し,東京の本社機能が3日以上停止する被害を想定。即座に大阪にグループの本社機能を移せるよう,データセンターを複数配備したり,バックアップオフィスの環境整備を進めている。
 講演の最後,片山副社長は「責任の所在を個人にまで及ぼすことが再発防止策になる」と述べた。日本の企業は伝統的に組織に帰結させようとする傾向が強い。だが,それでは再発は免れない。
(加藤 慶信=日経ソリューションビジネス) [2008/08/21]

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